INTERVIEWED 恒遠聖文氏
メンバー JOE、KYO、SYU

―今回、レコーディングエンジニアはKEIJI RONSON(YOUNG PARISIAN)君がつとめてますが、 その人選にまずすごい驚きました。

SYU「そう? いやまぁKEIが録音したTHEEE BATを聴いたらすごく良くてさ。 いつかKEIとやれたらいいなくらいに思ってはいて。 最初はレコーディングスタジオで普通に録ろうかなと思ったんだけど。 急にそれが頭に浮かんで、ちょうど2曲とか録るにはいいかなと」

―仕上がりはいかがでした?

SYU「思ってたとおりよかった。 最初アイツが仮ミックスしたやつ聴いてもうなにも言う必要ないくらいの。 KEIは俺たちのこともよく観てるし、ロックがないと死んじゃうような男だから。 彼のなかでも二周三周して考えてるとこもあったり。あと、レコーディングとかってナーヴァスになったりするじゃん。そういうのもないし。すごく楽しかったし、リラックスした環境でいつもスタジオで練習してるくらいの勢いでパッと録れて。何回もやってないもんね?」

KYO「2テイクづつだね。すっげー早かった。俺はジャズが好きだってのもあるけど、 個人的にレコーディングってのはみんなで一発で録ってテイクも少なくしたい。 一回、二回で録ったテンションを50テイク目で出せるのかというのもあるし。そん時の気持ちの入り方とかが大事だからね」

―しかしものすごく凶暴な音質でしたね!

JOE「今はもうシャッフル文化っちゅうかさ、自分もiTunesでそうやって聴いてるし、 “この曲聴こう”っていう意識で聴いてる人ってあんまいないじゃない? シャッフルで聴いてて、“おっ!? なんだこれ?”っと思って曲とアーティスを調べるくらいの耳障りな音質がいいなと思って。そういう意味でも俺のiPodにTHEEE BATも入れてて、“ん!?”ってなったからね。まぁ、ああいう音質したかったってわけではないんだけど、 KEIJIROはコレができるんだったら、俺らもできるだろうと。SYUちゃんに言われて、俺もいいねいいねって」

―SNSでいうと、スクロールしてたら指が止まる感じですね。

KYO「アイキャッチじゃなくてイヤーキャッチみたいな」

JOE「そうそう。こないだラジオでもかかったけど、けっこうおっ!っていう音で。 そういう意味で大成功だったかな。だからみんなもiTuneにとりこんでシャッフルで聴いてくれってかんじですね」

SYU「シャッフルですぐ消費されちゃうからそこに引っかからないとね。 ラジオから急にCLASHが流れて、おぉ、やっぱかっけーなー! みたいに自分の頭のチューニングの方があったみたいになる時ない?」

―ありますね。

SYU「そういうのがあるって自分でもわかってるから、やる側としても出さないとね」

KYO「俺は全部THEEE BATみたいな音になっちゃうんじゃないかな?とちょっと心配もしてて。 Mixした波形を見せてもらったらもうすごいことになってて(笑)。 常識外れもいいとこでさ。これはないかなーとかも思ったんだけど、
でも、考えてみたらセオリー通りにやっても面白くないやと思い直して」

SYU「音をいじる初期衝動もあるし、KEIのイメージするWONDERFUL WORLDの良さもあって、 それをあいつも伝えようと思ってるだろうから、ああだこうだ言うより任せた方がいいなと思って」

―やっぱりライヴと録音物は別モノでキレイに録ったほうが、何度も繰り返して聴くっていう考えはあるとは思うんですが、 衝撃をパッケージングすれば、それもまた何度も繰り返して聴きたいって人もいると思うんですよ。 ハードコアパンクなんてもうその最たるものですし。

JOE「そうだよね。あと、こういうレコーディングは90年代のローファイブームの時だったら絶対やんないね。 多分みんなからするとこういう音は俺のイメージじゃないと思うんだよ。 もっとキレイなHONG KONG KNIFEのメジャー期みたいなのが 俺だってのが多分みんなの頭の中にはあると思うんだけどさ」

―あの轟音の中でJOEさんが歌ってるってのはいいですよね。

JOE「そうでしょ。それがやりたかったのよ。シャウトしてるんだけど、聴き取れないわけじゃなくてちゃんと歌っててっていう。それが今回できてよかった」

―なんか嵐の中で歌ってるみたいな。

JOE「工事現場で歌ってるようなね(笑)」

KYO「ノイバウテンじゃないんだから(笑)。今回は一発録りだし、 結局のところテンションの高さをどんだけ収めれるかって話で。 バンドとしては今すごくいいかんじなんで、そういうのが出てるかな。余計にいじくったりもしてない」

SYU「こうやってちょくちょく録ったものがあるってのはいいよね。 そん時そん時のバンドの状態もあるし、あらためて見えてくるとこもある。 いつも感じてることでも音で細かく聞こえると、おぉ!って思ったり」

―そうですね。というわけでBAREBONESもそろそろ新譜をお願いいたします(笑)。

SYU「えっ(笑)? まぁ、それはね……」

KYO「スパンが長いからなー(笑)」

―では、THE WONDERFUL WORLDの今後は?

JOE「アルバムはやっぱ重いんで、シングルをまめに出したいなと思いつつ。 シングルっていうフォーマットは遊べるしね。B面をカヴァーにしてみたりとか」

SYU「またありがたいかんじはあるしね」

KYO「今回ワンマン前に録ったけど、次のライヴの時にまた録って、 またその次のライヴの時に録って……って2曲づつやってるとそのうちアルバム出来んじゃんって」

―フエルアルバム方式ですね(笑)。

SYU「ディアゴスティー二的な(笑)」

JOE「アルバムをまた別に録るにしてもヴァージョンも変わってくるだろうしね。 だからシングルをいっぱい出したい」

―今回のシングルはただ出しましたっていうんじゃなく、ELECTRICってお店のことだったり、革ジャンだったり、時代の空気だったり、 楽曲としてのNIRVANAのカッコよさだたったり……いろんな背景や空気を引きれてて、今ならではのものになってると思います。

SYU「「ELECTRIC」ってお店もそうだし、KEIが録音に携わったのもそうだし、それぞれの愛が重なってる。 俺たちは自己愛も強いしさ、やっぱり自分が好きだった音楽を愛してて、 それをこんなにいいんだよって言うのを人に伝えたいわけで。それがまた聴いた人に重なっていく。 シングルはそれがパッケージングされたもので、そういうのが人のこころを動かすんだなって。 俺自身も単純にそういうものが好きだし。
例えばさ、ステージで鮎川(誠)さんがブルースのこと語った時にすごく嬉しそうな顔するじゃない?見ててうれしくなっちゃうし、そういう人が出す音って一番わくわくするし、自分もそうなりたいんで」

―WONDERFUL WORLDの作品ってすごくそういうとこありますよ。

JOE「そう思ってもらえたらうれしいね。あとはライヴ。やっぱライヴを観てほしい。 毎回違うしさ。ヴァージョンも」

―たしかにそうですね。

JOE「もちろん曲順は決まってるけど、曲の終わりはこうで、ここは続けてバッ!っと いこうとかなんにも言ってなくて。もう投げっぱなし」

―なにが起こるかわからない面白さがありますね。

JOE「やってる方もおもしろいし、 もっといえばぶっちゃけ許されるならライヴ盤をいっぱい出したいくらい」

―こないだ、ライヴを観ててあのせめぎ合いはジャズみたいだなと思いましたよ。 ジャズ好きの人にはなんて言われるかわかりませんけど(笑)

SYU「まぁ、よくいえばジャズ? マジかよ、オイ!みたいなとこはたまにあるからな。 一回目のライヴからさ、練習で一回もやったことのない弾き語りで曲が スタートするみたいなのを急にやったりするんだよ(笑)。 他にも突然イントロが長くなったりするのをKYOちゃんが喜んでたりさ。 俺は普通の顔してるけど、マジかよ!みたいなのはあるよ」

JOE「ははははは!」

SYU「おいおいおいおいみたいな」

KYO「説明しないからね」

JOE「かっこつけていえばそういうスリルを求めてるとこはあるかな。 みんなもスリルを感じてくれればね」

KYO「でも、最近はあんまりやりすぎちゃいけないんじゃないかしらと思ってて。 ライヴのアドリブパートとかかなり好きにやってるんだけど、あんなにやってると JOEのファンが離れちゃうんじゃないかと。どんどん長くなってるし、やりたい放題やってるからね。 俺の趣味をあまり出しすぎるとどんどんマニアックな方にいっちゃうし」

SYU「いやいや、KYOちゃんがあがってるときは熱量が高いからね」

JOE「そうそう、俺もそうだと思うよ」

―アドリブとかフリーの面白さを知る人がいるかもしれませんしね。 大半のバンドがライヴもCDどおりですし。

KYO「こないだ友達にもちょっとアドリブの感じが変わってきたよねと言われて。 前は俺が全力で走ってて、みんなについてこーい!みたいなかんじだったのが、 最近みんな違うとこを走ってるみたいな(笑)。JOE は最初からいってらっしゃーい! みたいな感じで、SYUちゃんHIDEちゃんは、えっ?えっ? みたいなとこもあったけど、最近はそうじゃないもんね」

SYU「まぁ、クセもわかってきた。ここでそろそろいくな、いっちゃうだろうな、みたいなね。そのタイミングがわかってきたし」

KYO「まぁ、そんな感じで自由にやってますよ。 MAD3よりもMOSQUITO SPIRALの方がよかったし、今はほんとに好き勝手にやらしてもらってる」

SYU「よくある今後はこうしていきたいみたいなのはもう俺ん中では実はなく。 明日ライヴだったらもうそれがすべて。だからさっき言ったみたいに記録みたいなものは、 残しておいた方がいいよね。だってほんとにいつなくなるかわからないしさ」

KYO「そんなに後があるわけじゃないし」

SYU「JOEが失踪しちゃうかもしれないし」

JOE「わははは」

SYU「だからほんとにその日がすべてっててのを繰り返すだけで」

JOE「まぁ、あとはロックの神に委ねてやってくだけだよね。
ぶっちゃけ俺らもそれなりの年齢じゃない? 昔はこの年齢になってこんなことやってると思ってなかったけど、 まだまだバリバリ若いしね。とにかく今が最高だよ。 俺たち今が一番。昔の名前で出てますではやってないから。とかく最新型でやってる。自分で楽しんでやってるしね。今がすべてさって感じです」

KYO「まだ伸びしろもありますね」

以上 おまけに続く

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